AIのPM — 人に代わってプロジェクトを引き受け、依頼を受けて成果物を作ってくれるAIの担当者 — に同じ仕事を任せても、一度で望んだ結果を受け取る人もいれば、三度も四度も差し戻す人もいる。最大の違いは依頼文にある。良い依頼には目的・範囲・形式・例の四つが含まれている。この記事では、その四つを一つずつ掘り下げ、弱い依頼と強い依頼を実際の文章で並べて見せる。
もちろん成果物は依頼文だけで決まるわけではない。モデル自体の能力、与えた資料、使えるツール、これまで積み上がった会話の文脈も一緒に作用する(Anthropicの技術資料もこれらの要素をまとめて扱っている)。ただ、その中でユーザーが最も直接手を入れられるレバーが依頼文だ。
AIのPMは人間のPMと同じように「受け取った情報の分だけ」仕事をする。曖昧な指示を受けると聞き返して隙間を埋めるが、そのやり取りが繰り返されると、結局は人間が毎回依頼を整える作業に縛られてしまう。良い依頼はそのやり取りを減らし、最初から正確な成果物が出る確率を高める。
内装業者を思い浮かべると分かりやすい。「リビングをちょっと素敵にしてください」とだけ言えば、業者は自分の好みで施工してから「これじゃないんだけど」と聞かされる。一方で「20坪のリビング、ホワイトトーンの壁紙に無垢材の家具、予算300万ウォン、来週の火曜まで」と言えば、見積もりから正確に出てくる。曖昧さは親切ではなく、判断の負担を相手に押しつけることだ。
| 要素 | 問い | 欠けると生じる問題 |
|---|---|---|
| 目的(なぜ) | この成果物はなぜ必要か | AIが方向を勝手に決める |
| 範囲(どこまで) | どこまでやってどこで止まるか | 小さくしすぎるか大きく広げすぎる |
| 形式(何として) | ウェブ/アプリ/文書/調査物のどれか | 成果物のフォーマット自体がずれる |
| 例・制約 | 参考にする基準と守るべき線 | 正解の基準がなく手戻りが繰り返される |
四つをいつでも全部埋めなければならないわけではない。必要な情報の量は作業の性質とすでに共有されている文脈によって変わる。まずは最小限で依頼してみて、結果がずれたら抜けていたものを振り返って補う方がよい(Anthropicの技術資料も、最小限のプロンプトで試したうえで失敗に合わせて足していくことを勧めている)。四要素は必須項目というより、結果が期待とずれたときに「何が抜けていたか」を振り返るチェックリストとして使えばいい。
目的は、AIのPMが「何を優先すべきか」を判断する基準だ。目的がなければ、見た目はそれらしくても使えない成果物が出てくる。
✓ 「来週の火曜、シリーズA(初期スタートアップが本格的な成長資金を受け取る投資段階)の投資家ミーティングで使う会社案内。うちのチームの実行力を数字で見せるのが目的。」 → 「数字中心の構成+実行力の強調」という基準で初稿を組む。
✕ 「このデータ、分析してくれる?」 → 分析が目的ではないのに、AIはデータを要約するところで終わってしまうことがある。
範囲は、AIのPMに「ここで止まる」を知らせる境界線だ。範囲がなければ、狭くしすぎて足りないか、広げすぎて過剰な作業になる。
✓ 「国内の同種サービス5社だけ、価格ポリシーと無料トライアルの条件だけを表で比較して。残りの機能比較は次の段階で。」 → 対象の数、地域、比較項目まで境界がはっきりしている。
✕ 「ランディングページ(宣伝用の一枚もののウェブページ)全体を手直しして。」 → 「全体」の基準が人によって違う。文言だけなのかレイアウトまでなのか分からない。
形式を決めなければ、AIのPMはフォーマット自体を勝手に選ぶ。文書が必要なのにウェブページが出てきたり、その逆になったりする。
✓ 「今回のプロモーションを、モバイルでスクロールして見るランディングページ一枚、HTML(ウェブページを作る基本の形式)で作って。共有はメッセンジャーのリンクでやる。」 → 形式と共有経路まで確定している。
✕ 「アンケート結果、適当にまとめて。」 → 表なのかグラフなのか記述式のレポートなのか決まっておらず、AIが選んだ形式が実際に使う場と合わないことがある。
例と制約は、AIのPMに「何が正解か」を照らし合わせる基準を与える。これがなければ、出してきた結果が合っているか判断するものさしが弱い。
✓ 「この会社のブログ記事(リンク添付)のように、文は短く、淡々とした叙述体で書いて。絵文字は使わないで。」 → 参考の例(リンク)と禁止事項の両方が基準になる。
✕ 「予算を大きく外れない範囲で見積もりを組んで。」 → 「大きく」が曖昧で、いくらまで許容なのか分からない。
依頼文だけでは背景知識まで盛り込むのは難しい。ブランドのトーン、過去の決定事項、既存の資料は、毎回チャット欄で説明し直すのではなく、知識ONTLE(関連資料の保管庫)に先に上げておく方がよい。AIのPMは依頼を処理する前にここにある文書を参照するので、あらかじめ上げておけば同じ説明を繰り返さずに済む。
資料がたまるほど依頼文はむしろ短くなる。文脈を覚えておく場所が、チャットではなく保管庫に移っていくからだ。
依頼を一度にいくつも投げると、AIのPMが処理の順番を勝手に決め、一つがずれてもどこで狂ったのか見つけにくい。かといって細かく刻みすぎるとやり取りばかり増える。分ける基準は一つだ。この作業の結果が次の作業の入力になるか。 そうなら分け、互いに独立しているなら束ねてもいい。
こうして分けるときに生まれる止まり所が確認ポイント — AIのPMが途中の結果を見せ、人が方向を点検する場だ。元に戻しにくい作業ほど、元に戻しやすい段階を前に置くのが安全だ。
四要素が実際にどう働くのか、ONTLEで週末セールのプロモーションページを作る場面で追ってみよう。
準備。 まずブランドガイドと前回のプロモーションページを知識ONTLEに上げておく。トーンと形式を毎回説明しなくて済むようにするためだ。
依頼(四要素を込めて)。 一つの依頼に目的・範囲・形式・例をすべて入れる。
一文にまとめても、目的と境界がそのまま生きていなければならない。
「知識ONTLEのブランドガイドのトーンで、今回の週末セールで既存顧客の再訪を引き出すプロモーションページを、モバイルHTML一枚で作って。ヒーローと特典ブロック3つまでだけ手を入れて、決済フローはそのまま。コピーは短く、絵文字なしで、メッセンジャーで共有する。」
最初の成果(初稿)。 AIのPMは聞き返すやり取りなしに初稿を作ってくる。ヒーローの文言はこう出てきたとしよう。
この週末、また会えてうれしい 逃すと惜しい3日間限定の特典
特典ブロックは[新規登録クーポン]→[全商品送料無料]→[常連追加ポイント]の順に配置されている。形式(HTML一枚)とトーン(ブランドガイド)は最初から合っていた。
修正(ビフォー・アフター)。 ところが目的を見直すと、このページは「既存顧客の再訪」用だ。初稿は一番上に[新規登録クーポン]を置いているので目的とずれている。全体を作り直す必要はない。元に戻しやすい小さな依頼一つでいい。
「特典ブロックの順番だけ変えて。既存顧客向けだから[常連追加ポイント]を一番上に、[新規登録クーポン]を一番下に。」
修正後の順番は[常連追加ポイント]→[全商品送料無料]→[新規登録クーポン]。ヒーローとコピーはそのままに、ブロックの順番だけ変わった。最初の成果がそのまま確認ポイントになり、大きな無駄なく目的に合わせて方向を切り替えたわけだ。
公開はその後。 順番まで合ったのを目で確認してから初めて「このまま公開して」を別に依頼する。初稿・修正の段階で止まっている間は元に戻すものがなく、公開のように元に戻すのが面倒なことは確認の後に回す。
情報が抜けた依頼だったら流れは変わる。形式を決めなければ文書で出るかページで出るか分からず、目的を抜けば初稿の一番上のブロックがずれても、それがずれているのか照らす基準すら弱い。良い依頼はAIのPMをもっと賢くするのではなく、すでに持っている能力を最初から正しい方向に使わせる。
聞き返しは、依頼にどの情報が抜けているかを知らせる合図だ。聞き返してきた項目が目的・範囲・形式・例のどれに当たるかを見れば、次の依頼でその場所を先に埋めてやり取りを減らせる。
目的が先だ。目的がはっきりしていれば、範囲はそれに合わせて自然と狭まる。逆に範囲だけ決めて目的がなければ、決めた範囲の中でも見当違いの方向に作業が流れることがある。
「禁止事項」でも入れればいい。何になるべきか分からないなら、何になってはいけないかだけを明示しても、AIのPMが照らし合わせる最低限の基準ができる。
依頼にかける1分が、待ち時間と手戻りを減らす。目的・範囲・形式・例を込めた依頼とそうでない依頼の差は、ONTLEで実際に一度送ってみるのが一番早く腑に落ちる。
https://ontle.kr
筆者: チョン・ユナ | カテゴリー: AI PMの話